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最高裁判所第三小法廷 平成元年(行ツ)174号 判決

岡山県津山市高尾五九〇番地の一

上告人

日本植生株式会社

右代表者代表取締役

田村勝己

右訴訟代理人弁護士

藤本博光

同 弁理士

瀧野秀雄

有坂悍

鳥取市弥生町二一七番地

被上告人

ユタニ緑地株式会社

右代表者代表取締役

湯谷武夫

右当事者間の東京高等裁判所昭和六二年(行ケ)第五四号審決取消請求事件について、同裁判所が平成元年九月二七日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人藤本博光、同瀧野秀雄、同有坂悍の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判宮全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 坂上壽夫 裁判官 安岡滿彦 裁判官 貞家克己 裁判官 園部逸夫)

(平成元年(行ツ)第一七四号 上告人 日本植生株式会社)

上告代理人藤本博光、同瀧野秀雄、同有坂悍の上告理由

原判決は本件発明の植生用網状体と第二引用例記載の土羽帯はその属する技術分野を異にするにもかかわらず、両者はその属する技術分野を同じくするものと誤認し、その結果、審決の認定を誤った視点から是認した違法がある。

一、本願発明はその発明の名称が示すとおり「植生用網状体」に関するもので、この網状体を用いて施工する緑化工法は、「全面植生工」に属する植生マット工法とよばれるもので、「マット類(粗目織布、わらすだれ、紙など)にたね、肥料などを装着したもので、これをのり面に張り付ける工法であり、このマットにネットなどを併用してマットの押えを補強したものもある。そして特徴として、〈1〉盛土のり面に一般的に使用するが、切土のり面にも使用できる。〈2〉マットによる直接的浸蝕防止効果がある。〈3〉保温保湿効果があるので不適期(夏季、冬季)の施工も可能である」(甲第八号証)のに対し、第二引用例のものは、「土羽帯を盛土、切取等の法面にその深部に向って傾斜するように前記控1bを指向させ前記袋体1aの前縁を盛土等の前記法面上に僅かに露出させまたは同法面より僅かに内方に位置するように等間隔に且つ等高線状に上下方向に亘って埋設させる」(甲第五号証-引用例二-実用新案公報第二欄三行乃至八行)ものであって「部分植生工」に属する筋芝工とよばれるもので、「芝片の長辺をのり面にそって水平に並べ、土を盛り、土羽打ちする工法で、筋の間隔は30cmを標準とする。特徴として、〈1〉盛土のり面に使用する。〈2〉筋芝より植生の被覆速度が早い」(甲第八号証)ものである。

二、このように本件発明の植生網状体と第二引用例記載の土羽帯とは植生工における技術分野を明らかに異にするものであるから、本件発明のみが有する「植生用網状体を単に張設するのみで落石防止等土砂扞止効果を有する」(甲第五号証第四欄七行乃至八行)という作用効果を看過し、植生材料の収容部分のみに注視して「収容部に植生材料を収容したものを法面に設置するためのものである点で、本件発明の植生用網状体と第二引用例記載の土羽帯は共通するものであり、そのことからすれば、両者はその属する技術分野を同じくするものと認めることができる」とする原判決の認定は、その前提において失当といわざるを得ない。

以上によって明らかなとおり、原判決は明細書記載の本件発明と第二引例記載の発明との属する技術分野の認定を誤って本件発明にのみある特徴を看過し、又は著しく経験則に反する事実認定に基づいて結論を導いているものである。

よって判決に影響を及ぼすこと明らかなる法令の違背ある場合に該当し、又は少くともこれに準ずるものというべきであるから、原判決は破毀されるべきものである。

以上

(添付書類-甲第八、九号証-省略)

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